2020 . 12 . 23
CORPORATE
「私たちの目的を達成するための最適解だった」ー開発チームの立ち上げにITフリーランスを活用した株式会社Brandit
D2Cブランド「TRUNC 88(トランク エイティエイト)」の運営や、アパレル向けECプラットフォーム「BRANDIT system」を開発・提供する株式会社Branditでは、現在、ギークスにご登録のITフリーランスの方が「BRANDIT system」の開発に参画しています。
外部に依頼していたシステム開発を自社で行うにあたり、開発チームの最初のメンバーとしてITフリーランスを活用した、Brandit社の代表取締役CEO 鍛治 良紀さんに、ITフリーランス活用を決めた背景やそのときの想いを伺いました。
Brandit社でITフリーランスを活用しはじめたきっかけ
ITフリーランス活用の背景
ーITフリーランスを活用する以前、「BRANDIT system」のシステム面はどのような状況にあったのでしょうか?
鍛治社長:「BRANDIT system」は2020年6月にローンチしましたが、その当時はすべて外注チームでシステムを作っていました。事業開発・サービスの構想は私たちで考えますが、それを具体的に形にするための要件定義は、外注チームのプロジェクトマネージャーの立ち位置で入ってくれている方々がまとめてくれました。実際にシステムを作るところは、オフショアのベトナムチームにお願いしていました。
ー自社で開発チームを持とうと思った理由を教えてください。
鍛治社長:前提として、どんなビジネスでも「自社で持つ」ということは、すごく大事なことだと思っています。ECサイトで例えるなら、売上を作ることだけがKPIであればプラットフォームを活用することはベターな選択だと思います。しかし、プラットフォームの活用を主軸にしてしまうと、顧客データが入ってこないことはもちろん、プラットフォームが全体施策として打ち出したり、変化したりした瞬間、それに合わせて右往左往することになるのがプラットフォームを使う弱点ともなります。そのような状況を避けるために、「自社で持つ」ことが大事だと思っています。
これは、開発についても一緒だと考えています。私たちは、お客様にECシステムを提供していますが、時にはシステムに問題が生じることもあります。自社に開発チームがないと、その問題が「緊急の対応を要することなのか」、「今日やらなくても良いものなのか」という判断も難しくなります。また、緊急の対応を要することだった場合に、外注チームは「土日は稼働していない」、「深夜は対応できない」というような制限がどうしても起きがちです。この状況では、サービスのクオリティを守り切れないと感じていました。このような考えから、自社で開発チームを持つことは、やらなければならないことだと感じていました。
ー今回開発チームを立ち上げるにあたり、ギークスのITフリーランスが参画しています。社員として採用することは検討していなかったのでしょうか?
鍛治社長:現在ITフリーランスが参画してくれていますが、社員を採用することは、今でも検討しています。CTOを、役員もしくは社員という形で迎え入れられたらと考えています。「プロダクトを守る長」ということでの責務が求められるところから、役員・社員でのCTOという立場の人は必要だと思っています。
ただ、開発チームの最初の人員としてITフリーランスを受け入れたのは、今会社として最優先すべきことを考えたときに、「役員・社員でCTOを迎え入れること」よりも、「プロダクトを自社で動かすこと」が重要だったためです。働き方に固執する必要はないと思い、まずは開発チームを作ることを優先しました。
ーITフリーランスを活用するにあたって、不安はありませんでしたか?
鍛治社長:開発チームにエンジニアを迎え入れていくにあたり、私たちには、開発言語が分からない・エンジニアが働きやすい環境が分からないから整備できない、というような課題がありました。周りの方々に相談すると「最初は経験とスキルをもったCTOのような立ち位置の方に入ってもらい、その人を軸に、エンジニアを迎え入れていくのがよいのでは」とアドバイスをもらいましたが、私たちはその1人目を見つけられないことに困っていました。
リスクマネジメントの観点では、開発チームに役員・社員を迎え入れることは大切だと考えている一方で、役員・社員がいないからビジネスが進められないというのは違うと思っています。それぞれが大事なことだと分かっているので、両輪で進めていく上で、「プロダクトを自社で動かす」ことに関しては、ITフリーランスを活用することを決めました。
優先度が高いことを考えて判断した結果、私たちにとっては、ITフリーランスを活用することが最適解でした。今の世の中的に、IT人材の働き方は柔軟になってきているので、ITフリーランスという選択肢をシャットアウトせずに受け入れていくのは、私が意識したところでした。
ITフリーランスを活用してみて
ー今参画しているITフリーランスは、それぞれどのような役割を果たしているのでしょうか?
鍛治社長:一番最初から参画してもらっているITフリーランスは、どういうスキルを持つ人が足りていないか・今のフェーズでどんなスキルを持つ人が欲しいのか、などといった今の開発チームに必要な人員を考えてくれています。私たちでは、エンジニアさんの詳細なスキルまでの判断ができないので、すごくありがたいです。他のITフリーランスに関しても、サーバーサイドでの開発や、各種機能の追加、インフラの設計などをお願いしています。
ーITフリーランスを活用して、よかったことを教えてください。
鍛治社長:高い技術力を駆使して、「BRANDIT system」に新しい機能をどんどん増やせるようになった他、プロダクトに対する信頼度が上がりました。
外注チームに依頼していた時は、何か問題が起きたときの対処のプロセスが見えておらず、対処に時間がかかるほど不信感を抱きやすくなっていました。ITフリーランスの方々にお願いするようになってからは、解決に向けて進んでいることが見えるので、信頼度は高くなりました。ITフリーランスの方々はプロフェッショナル意識が高いので、やるべきこと・やると決めたことに関しては、責任を持って取り組んでくれるという安心感があります。私もITフリーランスの方々を信頼して、お任せできています。
ー初めてITフリーランスを活用する企業様の中には「ITフリーランスは短期間でしか活躍してもらえないのでは」というイメージをもつ方もいらっしゃいます。そのような点で気になることはありませんでしたか?
鍛治社長:「短期間で終了してしまうのではないか」、「私たちが作りたいもの・やりたいことに対して共感してやり遂げてくれるか」という心配は残る部分ではあります。その気持ちもあり、最初は短期間での契約ですが、途中からは半年~1年という単位で、長期的に契約し活躍してくださる方を求めています。
でも、求めるばかりでは良くないと思い、私たちのビジネスのプロセスや、今後のビジョンをITフリーランスの方々にお伝えして、「Brandit社がやっていることにわくわくしてもらうこと」や「プロダクトとして興味が持てるもの」にできるように努力しています。
今ITフリーランスの方々が参画してくれているのは、この想いに共感してくれたからでしかないと思っています。Brandit社でやろうとしていることなどを最初のプレゼンでお伝えしたところ、みなさん共通して「面白そうことにチャレンジしていますね」や「こんなことまで出来るシステムを作り上げたことがないから作ってみたい」と言ってくださいました。創案者としては、これほど嬉しいことはないなと思います。
Brandit社について
鍛治社長に「BRANDIT system」を作った背景や、サービスに込められた想いも聞かせていただきました。
「BRANDIT system」を作った鍛治社長の想い
ー「BRANDIT system」の特徴を教えてください。
鍛治社長:「BRANDIT system」の特徴の1つは、決済を伴うECシステムはもちろん、商品情報を始めとした在庫管理情報・チャネル別情報・出荷売上情報など、すべての情報を一カ所に統合することで、売上情報だけでなく、原価や利益情報なども一つのシステムで全員が必要な際に直接アクセスできることです。
ECでは、受注管理システム・在庫管理システム・配送管理システムの3つのシステムで管理されているのが一般的です。しかし、管理システムが分かれていると「それぞれ別のシステムを活用しないと見たい指標を抽出できない」ことが問題になります。例えば、受注金額を確認するときには受注管理システムを確認し、在庫数やチャネル別売上を確認するときには在庫管理システムを確認する…ということになります。
そのため、これらの数字をもとに分析を行うためには、それぞれのシステムから情報をCSVではき出して、エクセルで集計するような作業が発生します。私たちが提供する「BRANDIT system」は、それをすべて1つのシステムで確認できるため、業務の効率化が図れます。
ー鍛治社長がこのサービスを作りあげたきっかけをお聞きしたいです。
鍛治社長:私は新卒でメディア事業やインターネット広告事業を展開する会社に入社しました。私は広告営業チームに所属し、通販・EC業界の企業さまを担当させていただいていました。そこで、ECの在り方や、CPC(クリック単価)・CPA(顧客獲得単価)のような業界用語などを学びました。この環境で社会人生活をスタートした私には、ロジカルな考え方・デジタル思考がベースにありました。
大きな転機になったのは、私がアパレルの会社に入社した時です。Wi-Fiが当たり前になる中全員が有線LANで仕事をしているような環境で、働いている人たちはデジタルに抵抗があり、「デジタル化が遅れている」ことを実感しました。他のアパレルの会社の話を聞いてみても、同じような状況の会社が多く、アパレル業界全体的に、デジタル化が進んでいない状況が見られました。
その理由を探ってみると、ビジネスの在り方が、ロジカルな考え方よりもいわゆる「可愛い・可愛くない」という右脳的な感性が重要視されているためだと感じました。その感性でヒット商品を作り出し、売上は立っているものの、「なぜ売れたか?」の分析がされていないため、再現性がありませんでした。私はその状況にもどかしさを感じました。
ただ、そこにデジタル思考を注入していこうとしても、アパレル業界で働いている方々は今までにその考え方をしてきていないので、水と油のように相容れない領域がありました。「みなさんに分かりやすく、理解してもらうためにどうしたらよいか」を考えて作り上げたのが、「BRANDIT system」です。
▲「BRANDIT system」の画面イメージ
私の過去の経験から、みなさんに受け入れてもらいやすいような工夫をサービスに取り入れています。例えば、「損益分岐点を超える・超えない」を「勝ち・負け」という表現にしたり、商品の売上等が確認できる一覧は、数字の羅列ではなく画像を並べたものにするなどUI/UXにも配慮したりしています。
システムがそれぞれ分かれていると、販売に携わる人は売上のみを見ている状態です。商品原価や仕入れコスト、チャネル別の打ち上げ構成を見る機会がないので、いくらで作ったか・何枚作ったのか・売るためのコストがどのくらいかかっているのかを確認する手段がなかったので、そこに気付きすら生まれませんでした。それを1つのシステムにすることで、役職や部署に関わらず、誰もがすべての情報を確認できる状況を作り出しました。
今後実現していきたいこと
ー今後「BRANDIT system」で実現していきたいことを教えてください。
鍛治社長:近年では、ECサイトを簡単に作れるサービスなどの広がりにより、ECへの参入障壁は低くなっている一方で、在庫管理や出荷管理というような、販売の裏側に小売りの肝となる部分までを配慮して参入する人は少ないと感じています。
ECサイトを手軽に作れるようなサービスは、在庫管理などの重要な要素が度外視されているので、ECをやっていく中で、在庫管理システム・顧客管理システム・マーケティングツールなどそれぞれのシステムをパーツ毎に契約をしていかなければならずに、月額何十万も払っているということが起きます。
「BRANDIT system」では、パーツごとではなく必要な要素を一気通貫でサポートします。ECとしての機能は当たり前に、在庫管理や出荷管理にとどまらず、今後はマーケティングツールも追加していきたいと思っています。
▼11月27日にリリースした「かご落ち対策ツール」
https://brandit.co.jp/news/202/
「BRANDIT system」を使えば一定の機能はすべて担え、また、どの機能をどれだけ使っても、月額無料で売上の最大化に向けて伴走させていただき、その対価として売上の11%をお支払いいただく形であることはお約束する、というのが私たちのプロダクトの大事なところの1つにしています。その上で、お客様にとってより満足度の高いサービスにするために、新たな機能の開発を進めていきたいと思っています。
このようなビジョンを描きながら、私たちは「BRANDIT system」で、ECを真剣にやりたい人たちのサポート・伴走することを目指しています。